【Canvas2 Short Story 『彼女にメイド服ウェイトレス服を』】 「な、何でわたしがっ!!?」
「何でって…見てみたいから?」
思いっきり声を上げた霧に対して、俺は率直に理由を話した。
今、俺たちがいるのは喫茶『やどりぎ』。もちろん竹内の家だ。
霧が俺の家に来ていた所で、エリスが『竹内部長の家に行きましょう!!』と言い出した。
最初は『?』を頭の上に浮かべていた霧も、扉を開け、ウェイトレス服を着た竹内が出てきたとたん合点がいったようで、『へ~』と感嘆の声を上げていた。
羨望の眼差しで竹内を見ていた霧を見て、オレが思い付きを口にしたのがついさっきだ。
『霧も着てみたらどうだ?』と。
「ほらほら~、お兄ちゃんもああ言ってることだし、霧さん着てみましょうよ~」
オレの横で、すかさずエリスが援護射撃に回る。
…というか、オレの台詞を予想してなかったか、お前。
「わ、わたしにあんなふりふりが似合うわけないでしょうがっ!!」
これまた予想通りの霧の反応。
確かに、霧がいつも着ているのはパンツスタイルのボーイッシュな印象のものだ。
着た姿を霧自身、想像できないのかもしれない。
「あ、大丈夫です。意外と似合うものですよ。特に桔梗先生みたいな美人ならとっても」
さっきまで他のお客の応対をしていた竹内が会話に参加してくる。
「おぉ、珍しく竹内が援護してくれるな」
「ふふ、実は私も見てみたいんです♪」
霧が突然来たときも、大して驚いてなかったことを考えると、もしかしてエリスと竹内がグルになってるんじゃなかろうか。
「ほらほら、霧さん。どんどん逃げ場がなくなっていきますよ~」
「この前、撫子の制服着せられた挙句、なんで今度はメイド服まで…」
「ウェイトレス服です」
「竹内部長、やけにこだわりますよね」
「ええ、某常連の方に一度『ご主人様と呼んでくれ』って言われたので、この際はっきりさせておこうかと」
「おにいちゃ~~~ん~~~?」
竹内の白い目線と、エリスのジト目が俺に向いてくる。
…まずい、いきなりピンチだ。
「お、おれなのかっ!? 弁解の余地はないのかっ!!?」
「ありません。言った本人ですから」
「お兄ちゃん、あとでおしおき」
「…なんで、俺にとばっちりが…」
お仕置きが何なのか知らないが、いきなりカウンターを食らうとたまらない。
「というわけで、ウェイトレス服を着てみましょう、桔梗先生♪」
凹むオレをよそに、相変わらず霧のことに関しては竹内もノリノリだ。
「竹内さん…なんか性格変わってない?」
「うふふ、そう見えます?」
「ええ」
「美人が着れば、『やどりぎ』の宣伝になりますから♪」
「……私の意見はないのね」
「さぁさぁ、霧さん、着替えましょうね~~。お兄ちゃんはさっさと外でていくの」
「へいへい…」
さも、当たり前のように、『やどりぎ』の外に追い出される。
着替えるのは『やどりぎ』の奥、たぶん竹内の部屋だろうに…外に出る必要あるのか?
第一、霧に着せて似合うんだろうか。
『見てみたい』と言ったものの、ああいった服を着た霧を見たことがない分、想像が出来ないのも事実だ。
「おにいちゃ~ん、入っていいよ♪」
以前、ふりふりのリボン付きの服を着た『妹霧』を想像したときまで思考が飛んだところで、エリスが扉を開けた。
「やけに時間かかったな?」
「うん。霧さん、『あたしにこんなの似合わないわよ』ってかなり抵抗したから」
「まぁ…霧だしな」
「ふふ…おにいちゃん、そんなこと言ってていいのかな、かな?」
やけにニンマリした顔でエリスが聞いてくる。つか、二回言うな。
「ほらほら、入って入って」
「押すなって」
(カランコロン)
「い、いらっしゃいませ」
『やどりぎ』に入った俺を出迎えたのは、いつもの制服を着た竹内ではなく、ショートヘアのメイドさん…霧だった。

「…ひ、浩樹、何かいいなさいよ」
戸惑い気味の霧がそこにいた。
着慣れない衣装だからか、もじもじと両足をこすらせるような仕草。
不安げに口元に寄せた右手。
今まで見たことのない霧を目の前にして、俺は声を出せなくなっていた。
「……馬子にも衣装?」
「こっ、この…一遍、死にたいみたいね…」
「冗談だって。予想外だったが、よく似合うぞ」
「そ、そう?」
「俺は嘘なんかつかないって」
「じ~~~…っ」
「ええい、そんな疑惑の目で見るなっ! ああもうっ。似合ってます!! べらぼーに美しいです!! 最高のメイドさんです!!!」
「なんか逆切れしてるわね」
「とか言いつつ、何でそんな嬉しそうなんだよ」
「ふふ…それはもちろん」
「もちろん?」
「好きな人から褒められれば、誰だって嬉しくなるわよ♪」
さっきまでとは打って変わって、いかにも嬉しそうに、片手にお盆を持ちながらくるっと一回転。
広がるロングスカートとエプロン、ちらりとだけ見えたストッキングに包まれた脚…
思わず『いいなぁ』と口に出しそうになってしまう。
惚れた弱み、とは言え、オレは霧の新しい魅力に打ちのめされていた。
「部長…なんだか私たち、いつの間にか蚊帳の外にいません?」
「バカップルここに極まれり、ね。しばらくほっときましょ」
「そうですね~。あ、『お仕置き』、何にします?」
「そうね…あのまま霧先生をお姫様抱っこして、商店街に行ってもらいましょうか」
「あ、それいいですね♪」
「「良くないっ!!」」 「あ、戻ってきた」
「ったく…いつの間にかとんでもないことをやらせようとするな」
「先生にはこれくらいやらせないとお仕置きになりませんから」
「あたしまでそれに巻き込まないでよ」
「う~ん、カップル同罪?」
「エリス、いつからそんなに黒くなった? そんな風に育てた覚えはないぞ」
「お兄ちゃんがいつまでたっても襲ってくれないから、グレちゃった♪」
「グレるな!! つか、グレる方向が違う!!」
「ふふ…桔梗先生も苦労しそうですね」
「怖い姑をもったものよ…」
「上倉先生を手に入れた代償なんですから、諦めましょうね♪」
「竹内さんもさらっと、キツイことを言うわね」
「そんなことありませんよ~。上倉先生に絵を描かせてくれたんですから、感謝してます」
「竹内さんにはあの馬鹿がずいぶんと迷惑かけてたみたいね…」
「そう思うのなら、先生をちゃんと捕まえていてくださいね。そのほうが美術部のみんな、喜びますから」
「ええ、そうするわ。アイツの尻を叩く役目はちゃんと引き継ぐから」
……いつの間にやら、霧と竹内が、今にも熱い握手でも交わしそうな会話をしていた。
「お兄ちゃん、私もお兄ちゃんのお尻、叩いた方が良い?」
「叩くなっ!! と言うか、女の子が『お尻』って言うな、みっともない」
「ぶー、いいもんいいもん。ウェイトレス服着た霧さん描いちゃうから」
「いつの間にスケッチブックを取り出した。…じゃない。それは俺の役目だっ!!」
いつの間にか、『やどりぎ』中のお客の視線を集めていることも知らず、俺たちの喧騒は続くのだった。
コメント欄でちょこちょこ書いていたお話に加筆訂正で霧先生のお話でした。
霧メインのお話は初めて…かな。
似合っているかどうかは作中の絵を見た皆様次第、と言うことで。
それにしても、『やどりぎ』制服は汎用性が高いですね(笑) どのキャラクターにも着せられるのがすごいです。
寝ぼけながら書いたお話なんで、ところどころある怪しい部分はご勘弁を…。
>冥界の性神官様
おかしい…本人の紹介では「品行方正な優等生神官」のはずなのに…邪念だらけだというのか(^^;ブタベストPERFECT GIRL…?No Titleこんばんは、いつも見ているゾ。
>担当声優沢澤砂羽さんの声は演技力高くて中毒性がありますねー。
冥界の性神官様ェ・・サツキヒスイ冬が始まる…よ?もうすぐ春ですねぇ、と春分直前に言う人ついに春になってしまいました…返信できてなくてすみませんです。
> なぜか不正な投稿扱いに…なんでだ
むむ、すみません。
イマイチFC2ブログのセキュリティの網はブタベスト冬が始まる…よ?ようやく寒くなってきましたコメントを書こうとしたらなぜか不正な投稿扱いに…なんでだ。
恐ろしく暖かいかと思えば急激に寒くなったりと変動が激しいですね。
こちらも文章や改造絵が遅々としてひでやん