Original Short Story 彼女たちのメモワール(回想録) ~春乃~ ”酒杯”
例の謎についてはSSの後にでも。色々とご紹介いたします。
Original Short Story 彼女たちのメモワール ~春乃~ ”酒杯”
「お酒っていつから美味しく感じるようになったんだろう」
私の独り言に答える人は居ない。
いや、正確にはさっきまで居たのだけど・・・
「すーすー」
朱音ちゃんはソファで寝むっていた。
酔いつぶれるほど飲んでないと思うんだけどなぁ・・・
私はそっと毛布を掛けてあげる。
暑い日が続いてはいるけど、眠ると体温は下がってしまう。
ちょっとしたことで風邪をひいてしまうから。
「朱音ちゃんに限ってそんなことはない、かな」
私はコップに残ってるお酒を一口飲む。
辛いような甘いような日本酒独特の味を味わいながら飲んだ。

「お酒の味も朱音ちゃんが教えてくれたんだっけ」
私の半生は朱音ちゃんとともにあった。
あれは高校入試の時だった。
私は地元の中学でいじめられていて、それから逃れるように遠くの高校を受験した、その入試で隣に座ったのが朱音ちゃんだった。
「あれ・・・消しゴムが無い」
受験の準備はしっかりしたつもりだった。
鉛筆はたくさん持ってきたし鉛筆削りもある。それなのに消しゴムが見あたらない。
「どうしよう」
「ん? どうしたの?」
その時隣にいた女の子が声をかけてきた。
「あ・・・なんでもありません、ごめんなさい」
「・・・そーは見えないんだけどなぁ、お姉さんに事情を話しちゃいなさいって」
お姉さんって、受験してるんだから同い年だとは思うんだけど・・・
でも確かに雰囲気はお姉さんっぽかった。
「実は・・・」
「・・・そっか、それじゃぁ」
「あっ!」
彼女は自分の新しい消しゴムを真ん中で半分に割った。
「困ったときはお互い様よ、はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
その高校には合格して春から通うことになった。
そして同じくラスに彼女は居た。
「あ、あの・・・この前はありがとうございました」
「ん? あー、消しゴムの子ね、受かってたんだ、おめでとー」
「ありがとうございます、それで、これを・・・」
私はこの春から使うつもりで用意した消しゴムを出した。
「この前の消しゴム、お返ししますね」
「んー、あれはあげた物だから別に良いんだって」
「でも、やっぱりちゃんとしたのをお返ししないと」
「・・・キミって真面目だね。私は朱音、貴方は?」
「私は・・・」
「そっか、それじゃぁ春乃って呼ぶわね。それじゃぁ友達になった印に」
そう言うと朱音ちゃんは私の差し出した消しゴムを半分に折った。
「確かに、返してもらったわよ、ね?」
「・・・はい!」
今までにあったことのないタイプの人だった。
それからの3年間の高校生活は今までとは違ってとても楽しかった。
私は朱音ちゃんにいろんな所に連れられた。
ちょっとした旅が好きな朱音ちゃん、私は歴史が好きだったから、その旅で見つけた古い建物や遺跡を見て回ったりもした。
今まで本でしか見たことのない昔の建物や遺跡を朱音ちゃんは一緒にまわってくれた。
そしてこのころの私は以前のいじめられてた私とはまるで別人のように
明るくなっていた。
「春乃って朱音にべったりよねぇ、出来てるの?」
他の友達にそう尋ねられた。
「出来てるって何が?」
「もぅ、春乃ったら・・・」
「駄目よ、春乃は私のだから」
「はいはい、私は手を出さないから安心して、朱音」
「あ、朱音ちゃんったら・・・」
同じ大学に進学して、中学の時の同級生にあった。
「あ・・・」
「・・・なんだ、同じ大学なんだ」
その一言に私の身体がすくむ。
「ちょっと、貴方は春乃の何なの?」
朱音ちゃんがその子の前に立つ。
「何って、ただ同じクラスだっただけよ」
「そう、それじゃぁただの他人ね。春乃、行きましょう」
「何、貴方のその態度。むかつくわね」
「別にぃ、だって私は貴方と関係ないもん。私はただの、春乃の親友なだけだから」
「親友? この子の友達だっていうの? へぇ、そんな物好・・・ひっ!」
突然言葉を飲み込む中学の時の同級生。
私の立っている位置からだと朱音ちゃんの顔は見えない。
「私の親友をバカにすると許さないわよ? それじゃぁいきましょう、春乃」
「え? あ、うん・・・」
「もぅ、なんなのよ、あの子は。私の可愛い春乃にけちつけてさ」
「えっと、その・・・」
たぶん朱音ちゃんは私の過去を察してくれてると思う。
「あ、いいのよ春乃。私は今の春乃が大好きだから」
「・・・ね、朱音ちゃん」
「何?」
「この後ちょっと時間ある?」
「・・・いいわよ、今夜はつきあってあげるわ」
その日、朱音ちゃんの部屋でお酒を飲みながら語った、私の過去を。
「それだけ?」
「・・・ごめんね、朱音ちゃん。ずっと隠してて」
「なんで謝るのよ?」
「だって」
「あー、もういいの。それは過去でしょ? 今の春乃はどうなのよ?」
「今の・・・私?」
今の私は・・・
「幸せだよ」
「ならいいんじゃない。ほら、せっかくだから飲もうよ!」
「私は日本酒はちょっと・・・」
「よし、それじゃぁお姉さんのとっておきを出しちゃうぞ!」
このときのお酒の味は一生忘れられないと思う。
「ただいま~」
「お邪魔します」
玄関の方から二人の声がする。
「ただいま、お母さん」
「お邪魔します」
「こら、祐介君。お邪魔しますじゃなくて、ただいまでしょ?」
「・・・お邪魔します、おばさん」
「もぅ、おばさんじゃなくてお義母さんでしょ?」
おなじみのやりとりをする私。
この辺は朱音ちゃんに見習って、というかノリでそうなってしまった所だった。
「あ、やっぱりおふくろこっちに来てたんですね」
「そうよ、祐介君。お母さんいぢめたの?」
「いじめてないです、どっちかというと俺の方が被害者ですから」
娘の雪奈は今日は祐介君とデートの日だった。
たまにはふたりっきりってのもいいかなって思って私は手を引いたけど、お祭り好きの
朱音ちゃんはどうせ付いていこうとしたのだろう。
それを息子の祐介君に見つかって追い返されたのだろう。
「春乃~、いる? 飲もう!」
そう言って私の家に来た朱音ちゃんを見れば想像がつく事だった。
「おばさん、おふくろ連れて帰りますね」
「何もそんなに急ぐこともないわよ、祐介君。もう少し寝かせてあげなさいな」
幸せそうな寝顔を見ているとずっとそうしていたくなる。
「雪奈、ご飯は食べてきたの?」
「ううん、食べてないよ~」
「よし、祐介君。今日は家で食べていきなさいな。晩ご飯が出来る頃には朱音ちゃんも起きると思うから」
「・・・間違いなく匂いに釣られて起きますよね、おふくろ」
はぁとため息を付く祐介君。
「ふふっ」
なんだかそれがおかしくなって笑ってしまう。
「よし、今日も腕によりをかけて作るわよ。雪奈は祐介君を接待しててね」
「接待って・・・」
更に疲れた顔をする祐介君をリビングに置いてキッチンへと入る。
「祐介君なら大丈夫だから一緒に作ろう、お母さん」
「そうね、朱音ちゃんが起きたときの事を考えると人身御供は必要よね♪」
「そうだね、お母さん」
「よし、それじゃぁ始めるわよ!」
「りょーかいだよ、お母さん!」
いつかは娘とも飲むことになるのかな。
それはきっと雪奈がお嫁に行くときだろう。
その時は朱音ちゃんが私に振る舞ってくれた、あのお酒を振る舞おう。
忘れられない思い出と一緒に、ね。
はい、というわけで、もう一人のママさん、春乃さんのお話でした。いつもの明るい彼女の背景にはこういう過去もあったんだなー、と絵描きとしてはしみじみと思ってしまいます。でも、朱音さんと一緒にいたら、どんなに落ち込んでても(無理やり)元気になってしまいそうですね~。
それにしても、本気で怒った朱音さん…怖そうです(汗)
ちなみに、朱音&春乃の学生時代の制服案、募集中(笑) 娘さんはブレザーなので、セーラー服タイプの方がいいかしらん?
○
前回のメモワールから2週間ほど経ってしまいましたが、種明かしをいくつかさせていただきます。
もうお分かりの方もいらっしゃるかとは思いますが、この『彼女たちのメモワール』というシリーズは早坂充さんのオリジナルストーリー『冬のないカレンダー』の外伝ストーリーになります。
#ちなみに、『メモワール』の作者名は作者さんのご要望で、内緒、ということになっています(^^; 理由は『そのほうが面白いから』だそうですが…。
さて、ここで『冬のないカレンダー(略称:冬ない)』『彼女たちのメモワール(同:メモワール)』の登場人物についてご紹介を。

深浦雪奈(ふかうらゆきな)
『冬ない』のメインヒロインです。彼氏の祐介君大好きボケボケ女の子。学校での成績は悪くないそうですが、勝負事にはめちゃくちゃ弱く、思い込みで暴走したり、ママさんに仕込まれた知識を元に思わぬ行動を祐介に仕掛けたりと、色々ドタバタを見せてくれます。ことあるごとに祐介に頭をわしづかみにされ『えぅ』とうめき声をあげること多数(笑)
元々はブタベが『よし、冬だから、ブタベの大好きな白いコートにおっきな帽子、マフラーを巻いた女の子を描こう』と思って、勢いでできた絵がこの娘さんの発端です。まさか二年経ってもこの娘さんを描いているとは思いもしませんでした。お義父さん(笑)はびっくりですよ?

苗穂祐介(なえぼゆうすけ)
『冬ない』の主人公君。幼馴染で彼女な雪奈と
ある意味こういうお話のお約束的な主人公、でしょうか。女性でいつも苦労している分(笑)、おムコさんに行っても立派に主夫ができることでしょう~。

深浦春乃(ふかうらはるの)
通称・雪奈ママ(笑) いつも明るくホンワカしていて、一日一回は祐介に『いつお婿に来てくれるの?』と訊くことが日課になってるお義母さん(を 今回のお話で、朱音との出会いも明かされましたが…毎日幸せそうですね~。この人をお嫁さんにした旦那さん(単身赴任中)もきっと幸せなはず。それにしても若いです(^^;
デザインラインは、雪奈を基本にして、やや髪を長く、胸を大きめにしています。フェミニンなロングスカートを愛用している辺り、“優しいお姉さん”的なイメージの強い方ですね。水着では意外に大胆ですが。

苗穂朱音(なえぼあかね)
祐介ママ、ですね。常にハイテンションで、息子の祐介&雪奈の愛を
ある意味で、このシリーズ全体のお姉さんな女性ですね。デザインラインについてはあまり深く考えてませんでしたが、『夜明け前より瑠璃色な』の穂積さやかさんがもうちょっとハイテンション&パンツスタイルになったらどうなるかな、と考えつついつも描いてます。パンツスタイルな女性はめったに描かないので、前回の絵はとても楽しかったです。
シリーズ内のヒロインの中では一番胸が大きいのも朱音さんの特徴でしょうか(笑)
春乃・朱音の名前についてはブタベが考えたのですが、朱音さんについては元ネタがはっきりしていて、声優の友永朱音さん(個人的には桜塚恋や仲里ひかりの声優さん、ですね)です。春乃さんは…多分『春の雪』(日本映画)辺りから…かと思うのですが、ブタベはその映画は見てないんですよね(^^;
※二人の苗字、および雪奈・祐介の名前はひでやんさんの考案です。
○
『彼女たちのメモワール』は『彼女たち』と付けたとおり、雪奈以外のヒロインのお話、という形になるかと思います(この辺はSS書きさんの匙加減しだいですが)。
というわけで、この絵になります(笑)

早坂さんの『originalshortstory 冬のないカレンダー #15 「二日遅れのホワイトデー、だね」』の冒頭に出てくる、雪奈・祐介のクラスメートさん(のイメージ)です。次に出てくることがあるのか、ブタベには分かりませんが…(ばく
デザインラインははっきり言って、千堂瑛里華です。彼女の髪を二つに分けて結んだらどうなるかなー、という試行錯誤で偶然この娘さんになりました。本編でも雪奈・祐介をいじくって楽しんでいる模様ですが・・・もし、彼女が本当に恋をする番になったら…きっと瑛里華同様、戸惑うんだろうなー、と勝手に絵描きの側で楽しんでたり。なんとなく、クラスでもいいんちょ的な立場で、いつもみんなをドタバタに巻き込んでるような感じがしますね~。
「ふっふっふっ。いーこと思いついたっ♪」
そんな感じの声が聞こえてきそうだったらブタベの狙いは成功です(^^) なんとなく、声のイメージは沢城みゆきさんなんですが…はてさて。
○
で、恒例(笑)のブタベの現状コーナー。体調はいつもどおりで、今日、お医者さんに行っていつもの薬(睡眠薬と精神安定剤)および、追加で消化促進剤(どうにも食欲が湧かないので。20時間食べなくても食欲がわかないのはまずいだろ…)をもらってきました。
で、GWが空けたらいったん実家のほうに戻ろうかなぁ、とおもっていたんですが…店舗…というか店長がらみでとんでもない事態になってしまったので(ここで書けないくらいの事態です)、しばらくは岐阜に張り付く見込みになってしまいました。やれやれ(^^;
#ただ、実家に帰らないせいで、往復の25’000円分の旅賃が浮くわけだから、お財布には優しいんですよね。前は三ヶ月に一度は帰ってましたが、半年以上帰ってませんねぇ。
>冥界の性神官様
おかしい…本人の紹介では「品行方正な優等生神官」のはずなのに…邪念だらけだというのか(^^;ブタベストPERFECT GIRL…?No Titleこんばんは、いつも見ているゾ。
>担当声優沢澤砂羽さんの声は演技力高くて中毒性がありますねー。
冥界の性神官様ェ・・サツキヒスイ冬が始まる…よ?もうすぐ春ですねぇ、と春分直前に言う人ついに春になってしまいました…返信できてなくてすみませんです。
> なぜか不正な投稿扱いに…なんでだ
むむ、すみません。
イマイチFC2ブログのセキュリティの網はブタベスト冬が始まる…よ?ようやく寒くなってきましたコメントを書こうとしたらなぜか不正な投稿扱いに…なんでだ。
恐ろしく暖かいかと思えば急激に寒くなったりと変動が激しいですね。
こちらも文章や改造絵が遅々としてひでやん